今年はうるう年&南砺利賀そば祭り&論文投稿

今年はうるう年なので、2月が29日まであって、本日は、まだ2月です。
2月は修士論文の作成や発表会もあって、早く過ぎていきました。まずい、もう、3月だ・・・と、いう感じです。

論文を投稿しようとしていますが、ほぼほぼ完成したところで、再チェックし始めると、いろいろ目について、なかなかです。
今回、投稿前にiThenticate でチェックをかけました。今までは審査後に、editor がiThenticate をかけて、30%以下にするように・・と、指示があったことが数回ありました。所属大学では、昨年の秋から、iThenticate が使用できるようになり、今回投稿しようとしている雑誌の投稿規定に中に、前もってiThenticate をかけるようにとの指示があったからです。参考文献や研究者の所属機関も対象になると30%近くの重複になってしまって、色々と悩んでいるところです。

話しがかわりますが、富山の季節のものに参加しました。
南砺利賀そば祭りにいってきました。
http://www.tabi-nanto.jp/event/post_68.html
http://www.info-toyama.com/s/spot/40051/



今年は暖冬だったので、雪像もとけかけていましたが、多くの人が参加していましたし、イベントの運営も工夫が満載でよかったです。




論文が受理されました・・・めでたい

教授になって、最初の学生を受け入れ、研究室を立ち上げてから、6年目に入っています。
着任以降、論文もでているし、富山で学生がやった実験データでの論文もでていますが、最近、受理された論文は、大学院生の1人が、自分の手で書き、コメントへの対応も原案をつくり・・の結果の論文です。


研究室を持った研究者は皆、同じ思いだろうけど「自分が、学生や若いスタッフだったときに、上からしてもらったこと以上のことを、してあげたい」と、私も思っていましたし、今も思っています。その1つが、自分で考えて研究をすすめ、でてきた結果から結論を得て、論文作成をするという経験をつむということです。それに加えて、自分で考えた実験をするために、必要なものを購入できるよう先生との交渉力もつける、研究費申請書類も少しは書く、研究室の備品や消耗品などにも気を配る・・全てのことをひっくるめて、博士課程修了後に、助教に採用されても大丈夫な状況にして卒業してほしいと思っています。助教やポスドクは、研究テーマそのものは、上司の考えに依存するけれど、それを上手に料理できるようにしないといけないし、昨今、大講座制という名のもとに、20歳代から30歳前半で独立させられる場合もあります。そんな時に、前をむけるだけの経験をもって、また、前を向ける体力をもって、巣立って欲しいと思っています。前をむくことができれば、足らないところは、助けてくれる人が出現すると思っています。

学生に論文を書かせていたらいつになるか分からないから、教員が書いたほうがいいとの意見をお持ちの方もいるし、実際に私もそう思うこともあります。実験も、あれやれ、これやれ、と、学生へ指示したほうが、データは効率よくでるし、お金もかからないし、と、思いますが、それでは、テクニシャンの養成になってしまうし、自分の足で歩くどころか、立つことができなくなる・・と、我慢していると、学生自身は、あれやれ、これやれと、いって欲しそうだし・・。と、心が揺らぐ時も今もあります。

今回受理された論文は、IFも低いし、内容もさほどでないし、速報だし・・・と、いう部分もあります。でも、今の大学に赴任して、学生が書いたはじめての論文が、受理されて、めちゃめちゃ嬉しいです。本当にめでたい・・めでたいです。

内容説明は、公表されてから、もう1つのブログでしますね。



下の写真のようにA4の紙1枚に、2ページ分を印刷するのを2Up印刷と私のプリンタードライブでは表示されます。たいていのものを2Upで印刷していたけれど、老眼っぽくなったのか、少なくとも論文は、2Upでは読めなくなってきました。数年前に、自分より20歳弱年上の方からは、「それが見えなくなる時が、君にも来るよ」といわれたことがあり、その翌日に自分より10歳くらい年下の人が、4upでプリントされたものを持ってこられて、妙に納得したことがあります。今まで、ずっと裸眼で過ごしていたので、はじめてのメガネ購入ももうすぐです。


 

節分・・修士・博士課程修了へのがんばりどころ

コメントをいただいた修士論文の記事・・ずっと前のものだけど たかか卒論、されど卒論、たかが修論、されど卒論


このころは、研究室とか大学院とかの紹介をきちんとしていたけど、最近は、個人的な事柄にふれることが多く、鈴木様のコメントは、本当に的を得ていて、ありがたく思っております。反省しきりです。

たかが卒論・・・の記事は、今、自分で読みかえしても、ふむふむと思える、大学研究室では毎年のイベントです。
修士論文は、学生本人もですし、指導している先生たちも、非常に手間と時間をかけます。教授になってからは、学生が書いたものをいきなり見るわけでなく、准教授や助教の先生が整えてくれたものを読むので、内容から入っていけますが、それでも、今年も2名分をみるのに、他のことは全て後回しにして教授室にこもったままで、10日くらいかかったと思います。いや、10日間ずっとみていたのでなく、1回目は、構成について、この内容を先に書いたほうがよいとか、後にしたほうがよいとか、あの図が必要・・と、細かな赤はいれずに見て、コメントをいいながら学生へ返し、2回目に赤で校閲をしながらみて、3回目は、修正したとことの前後関係がおかしくなってないか引用論文などが正しいかもあわせてみて、4回目に最終確認・・・と、学生と自分の間をいったりきたりが、4,5回なされるのに10日くらいかかりました。今年の学生は、私が修正したものを迅速に、夜に修正してくれたので、随分、はかどりました。

自分が、学生が書いたものを最初に校閲していた助手のころは、随分大変でしたが、そんな学生だった人たちからも毎年、年賀状をいただき、学会などで声をかけてくれて、それぞれの会社で活躍しています。修士論文のことを覚えてくれているのかなあ。

インフルエンザがはやっていますが、どうぞ、お気をつけて、先生も学生も、この時期を乗り越えてください。おたがいに。

この業界にいる限り、節分には節分イベントができそうにないです。
京都の実家にいたころは、節分には吉田神社へ古いお札やお正月のしめ縄を納めに行っているのが恒例でしたが、京大薬学の人たちも、それどこれでは、ないのだろうか。行っているのだろうか。などと、ふと、考えます。京大の先生たちは、効率よく、手際よく仕事をされるので、大丈夫なんだろうな。




東京へ電車で行く時は、本当に寒いです。冬の間はこの2点セットです。
東京への旅も、もうすぐ、北陸新幹線になります。

逆に、関西や名古屋に行く電車が金沢どまりになるので、不便になります。
朝4時53分富山発サンダーバードだと8時過ぎに大阪に到着できますが、これにも乗れなくなります。
いや、この4時53分に乗るときは、3時半起きなので、出張先では、ハイ状態で大丈夫なんだけど、もどってきて、1週間くらいはダメージをひきづります。どこから、半日休みたいと思いながら、休む勇気もなくです。








 

♪クリスマス♪

この時期に海外に行くと、日本以上にクリスマスデコレーションが美しいです。





サン・アントニオもそうでしたが、暑いところではホテルのロビーには、フリーで飲める水があります。
レモン水のことが多いのですが、今回は、すいかやベリーやと毎日日替わりでした。




この日はストロベリー



いたるところにクリスマスツリー。


今回宿泊したホテルのロビーには、お菓子で作成されたデコレーションがありました。










この写真をそのままクリスマスカードにしたいな。

ホテルからの見晴らし  これは朝焼け



庭には・・






ウサギとサボテン
 

薬をみつけること・・今後の研究方針




先週、日曜日の東京出張の帰りの羽田空港にて。
本日は、今から、金沢で開催される学会に行きます。6年生の学生が発表します。これで、彼の研究活動は大学ではひとまず終了ですので、うまくできるといいな。

今月は週末が全部、仕事です。
自分が大学院生、助手、助教授、准教授だった時に、教授が暇とは思っていなかったけど、研究の中で最も時間がかかる実験という部分をしてないのだから、身体的な疲れはないのだろう・・・などと思っていました(思っているだけで、口には出さないよ。もちろん)。


教授になってみて、時間も非常にとられるし、出張も多いことを実感しています。
でも、また、今日も、いろいろな方にお会いできることを楽しみに金沢へ行ってまいります。


そうそう、年賀状は買いました! あとは、クリスマスカードです。
年内に自分が書くべき論文は書こう・・と、思っているところです。

研究室を運営するようになって5年を迎えようとしています。
今までは、精神疾患や依存に関係する遺伝子・分子の機能を中心に調べてきましたが、次の5年は治療薬を見つけるための研究に少しシフトしていこうと思っております。

本日や来週の学会でも、情報を得ようと思っております。

少なくとも、研究者が口にしてはいけないと、最近、私が、思う言葉

自分の身近だけでなく、他の研究者同士が話しているのが耳に入ったりした折に、不愉快だなあ・・・という言葉を感じることが多いです。


よくあるのは、

絶対に酵素活性はありません

もちろん前後関係は、失活しているかもしれないから、ここを直してみたら・・という提案に対しての返事です。酵素のところに、抗体、たんぱく質、とか色々バリエーションがありますが、絶対・・は、やっぱりいってはいけないと思うんですよね。研究者じゃなくとも、そうだと思うけど。1カ月くらいの間にひっくりかえったことが、何度もあると、かなり、疲労感をもちます。


ある学会で、マウスの生存曲線はとってあるの?との問に

そんなものが重要だとは思いません

自分の使う遺伝子組み換えマウスが普通より死にやすいとか、長生きだとかは気にならないのかなあ。というより、きちんと実験ノートをとってないってことだよね。そんなことを口にする人は、今までにも、タンパク量での補正は必要ありません、重要と思えません。他の制限酵素でもチェックするなんで無駄です、重要でありません・・・で、データをかなりつぶしてきているんだろうなあ。と、想像してしまいます。

なんで、こんな論文がNature にのったんでしょうかねえ

これは、どこの研究室でも、1人はいるんですよね。Natureどころか、自力で一報も論文を書いたことがない人がよくいうんですよね。でも、研究室に入ったばかりの学部生は、こんなことを口にする先輩に羨望のまなざしを送ったりするので、なお、ややこしい。

逆に、データーディスカッションをしている時に、

その実験なくとも、論文にはなります。
と、この手の人はいうんですよね。
論文は、とっても大事。それは、私も否定しません。教授になる時、競争的資金を得る時、大学院生なら学振をとるとき、論文は大きなサポートです。自分が生きている証でもあります。でもね、研究成果って、論文にさえなれば、いいってもんじゃなくて、論理的に証明して、新しいことを証明しているか、見つけているかが重要だと思います。丁寧に、自分が必要と思えるデータは完備して投稿したいと思っています。自分がレフリーやっていて感じるけど、自分の専門とドンピシャあった内容でないことを審査することもあるので、時々、重要な欠点を見落としている(私が激しく指摘していても、もう一人の査読者はノーマークだったり、逆もあります)こともあるので、印刷・公表された時に胸をはれるようにしないといけないと思うのだけど。

企業に行った人は、給料が高くていいなあ

これって、後輩には夢を失わせ、上司には愛想をつかされるのだけど・
そして、セットでいうのは

いつまでも、こんなところにいない

周囲がつかれちゃいますよ。
そのバリエーションとして、私たちの世代は、大学院で借りた奨学金は20年間大学の教員をしていると返済免除になったのだけど、海外ポスドクをしていた方が家族のことがあって国内へもどりたいといろんな人にお願いしていて、そうこうしていて、助手でとってくれた教授がいました。着任しての第一声が、これからよろしくお願いします、で、なく、

これで、奨学金返さなくていいです


だったことは、20年近くたった今でも、上司だった教授が酒の席で、よくいっています。その方々は、後に関係が悪くなっていったのですが。


おわら風の盆です。
(この写真は八尾でのものではないです)









 

「薬剤師は医師とは対等なのでしょうか」コメント欄にいただいた質問への、私からの答え

猛暑といってもいい日が1、2日あった後、富山では、随分、すごしやすい日が続いています。
コメント欄に以下の書きこみをいただきました。
特に断りもなかったですし、個人を特定するような内容でもないので、そのまま公開してもよいかとも思ったのですが、少しだけ編集して、ここにのせて、私からの答えを書かせていただきます。

★質問はここから★
薬剤師は医師と対等な関係なのでしょうか?
薬学部を受験しようとしているものです。
私の中で日本の薬剤師に処方権がないことなどから日本の薬剤師は医師に従属するようなイメージがあります。

また、薬剤師が病気の原因の解明に関する研究に携われるものなのでしょうか?
いわゆる難病といわれるものに関してです。

また、薬剤師が医師より勝るものは何なのでしょうか?医師にはできない患者を支える手段とかです。
個人的な意見で構いません。
突然の長文失礼しました。
お時間がありましたら宜しくお願いします。
★質問はここまで★

私自身も感じていたことです。
博士課程の学生だった時に、どこで情報を得たのか、高校の時の同級生で医学部に進学した人から、7年ぶりくらいに電話がありました。
「薬学部行って、博士課程にいっているって、本当? 学位なんで論博で、いくらでも、どうでもとれるのに、無駄だと思う。薬剤師なんて、医師の処方箋通りに薬の数を数えるだけの犬だよ。そんな暇(博士課程に行っているということかと)あったら、医学部を再受験したほうがいいよ。」
と、いいました。何か前後があったのかもしれませんが、自分の進路に自信をもっていなかった私には、眠れぬ夜が続きました。

確かに、サラリーとか、社会的に考えられている地位を考えると医師のほうが上だと思います。
でも、上とか下とかいうのは、極端にいえば、新聞屋さんと牛乳屋さんを上とか下といっているような感じかな、などと思います。病気の診断は、医師しかできないと思います。薬剤師には処方権がないので、医師が処方箋をかかなければ、調剤も服薬管理指導もできないです。でも、医師は、薬剤師に意地悪をするために、書かないというわけにはいきません。薬物治療以外の治療方法もあるし、どの検査をすればよいかの判断は医師がしますが、書かれた処方箋が適切かどうかの処方箋監査を薬剤師がしますし、今や、処方箋監査なしには、投薬ができません。また、「どうすればいい?」と、医師が薬剤師に問い合わせるのは、病院でも薬局でも頻繁にあることです。ましてや、病院で、「・・と、いう理由で、抗生物質はXXにかえたほうがいいです」と、薬剤師コメントが電子カルテに記入されたら、よほどでない限り、医師は処方変更します。給料は差があるけど、上下でないと思っています。

難病の原因の解明については、治験や臨床研究(患者さんやヒトのサンプルが必要な研究)は、受け持ち患者を持っている医師のほうがやりやすい面があると思います。しかし、臨床研究は、研究の中のほんの一部であって、その発想に結びつくまでに10倍以上の基礎研究がなされて、成果があることが普通と思います。疾病をターゲットにした基礎研究は、薬学部以外の自然科学系学部でもなされていますが、人体の生理機能や化学物質のことを若い時に学んでいる薬学部出身の者にプライオリティがあると私は信じています。私のように薬学部の中でも臨床寄りの研究者にとっては、自分の受け持ち患者に特定せず、研究対象の患者を受け持っている医師にアプローチできる薬学研究者という立場はいいものだと思っています。

薬剤師が医師よりまさることは、化学物質や生化学の目をもっていることだと思います。特に病院では、化学の知識をもっているのは、薬剤師だけといっても過言ではないです。有機化学がまったくできないと薬学部教員の中でさんざんいわれている私ですが、それでも、病棟で、「今度、採択された薬は疏水性が高いから、脳にいきやすいのかな」などと、つぶやいて、オーといわれたりしました。

薬学部教員という立場から、あまり否定的なことはいえないこともありますが、大部分は、本音です。

私に、犬、と、いった同級生は、今、どこで、何をしているのだろう。後になっても、あの電話のみです。


 

送別会・・・共同研究先から来ていた大学院生

私の専門は、中枢薬理です。
助手のころ、脊髄損傷をテーマの1つとしたり、眼科系統の薬の開発で視神経の研究をお手伝いしたこともありますが(視神経は、中枢神経です)、もっぱら、脳のことをずっとやっています。


私がこの10年くらい研究をしているShati/Nat8lという分子が代謝に関係しているとのことで、私たちのKOマウスを使うためにオーストリアの大学から博士課程の大学院生が4月から来ていました。今週土曜日に富山を発ち、京都に滞在した後、7日に帰国します。本日、その送別会をしました。


研究室に海外の方がいると、余分な仕事が増えるし、言葉の問題があるし、文化も違うしで、自分も若い時は、すごく歓迎というわけではありませんでした。日本人大学院生が、研究とは直接関係のない研究室の用事もしなければならないところ、外国人は実験だけできることから、その方が良いデータが出たり、良いジャーナルに論文が受理されると、ねたみのような、気持ちを持つ日本人がいるのも感じていました。

研究室を巣立った後や指導教員が一線を退いた後も、明確にいうと研究室の先生を抜きで研究室で得た友人関係や信頼関係は継続します。それは、日本人も海外の方も同じです。今、自分が大学院生だったり、助手だった時にご一緒した方とも共同研究をさせていただいており、ご縁を大切にしたいと思っています。

今回、私の研究室のスタッフや大学院生が、オーストリアの方に対して、研究でも、遊びでも(私は直接知らないのですが、いろんなところに一緒に行ったり、休日を楽しんだりしてくれていたようです)、親切にしていて、私は、とても、自分のラボのメンバーを誇らしく思いました。


また、11月に再来日するとのことです。
そのころは、スキーに行くのかな(私たちの世代はスノボは全く経験がないのですが・・・)。


記事の内容とは関係ありませんが、カナダ・バンクーバーの美しい写真の続編です。








絵葉書ぽい





精神疾患とは?

と、いうことを一般の方(医療や薬学関係以外の方、また、科学者であっても、精神疾患や脳のことをメインに研究されていない方)へ説明するためのスライドを作っています。うつ病は、ドラマのタイトルにまでなっていて、誰もが何となくは御存知だと思います。

一方で、統合失調症や双極性障害などとなると、耳慣れない感じはしませんか。


今、これの病気をシンプルに説明するための図を作成しています。

できたら、ここで発表します。







 

最近の研究報告から

 本日は、青い空が広がり、富山らしくない天候です。





教授室の窓からの光景です。


昨年、私たちが研究しているピッコロという分子の一塩基多型と生理機能と、さらに、患者さんの病状との関係が論文として掲載されました。

この論文は、以前に記事にしたように掲載料が1350ドルです。そのためでしょうが、オープンアクセスといって、誰もが論文をみることができます。
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0076960




この内容について、双極性障害研究ネットワークのレターにて紹介をいただきました。
その一部を抜粋します。



双極性障害と関連するピッコロ遺伝子の個人差による機能的変化について

 

私たちの身体は、タンパク質で構成されています。脳も、多くのタンパク質が組み合わさって成り立っていて、その1つ1つの働きによって、物事を考えたり、感情が表現されたりします。

 その中の1つに、ピッコロという名前の分子があります。これは、インスリンという糖尿病に関係するホルモンの分泌を調節する役割があるタンパク質として日本人の研究グループが1980年代に発見しました。私達の研究グループが、脳での機能を明らかにして、ドパミンという、脳で報酬(“何かを欲しい、何かをしたい”という欲望の気持ち)などに関わる重要な働きを持つ神経伝達物質の分泌量を調節していることを見出しました。さらに、この分子が、(覚せい剤などによって)ドパミンが働き過ぎた時にその働きを抑えること、この分子の一部を多く作るように遺伝子操作したマウスがうつによく似た行動を示すことなど、報酬やうつ状態に関係する可能性を報告してきました(Cen

et al., Mol. Psychiat. 13, 451-463 , 2008; Furukawa-Hibi et al., Neuroreport 21, 1177-1181,2010)。

 ヒトの身体の中で色々なタンパク質が作られますが、それらは、DNAによる情報をもとにしています。このようにDNAの情報をもとにタンパク質が作られていくことを翻訳と呼びます。DNAは、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)の四種類の塩基から構成され、その組み合わせによってタンパク質を合成しています。このように、DNAからタンパク質が作られることを翻訳といいます。DNAの中には、タンパク質になる部分(エクソン)の他に、タンパク質に合成されない、イントロンと呼ばれる部分があります。ヒトの体をつくるタンパク質が正しく作られるために、それぞれのイントロンが機能を持っていると考えられていますが、十分には分かっていないことも多くあります。

 DNAの配列にはたくさんの個人差があります。一塩基多型(SNP [スニップ]single nucleotide polymorphism)といわれるもので、この部分では塩基が一つだけ人によって異なっています。双極性障害の患者さんは、ピッコロのDNAの中の24番目のイントロンにあるACに変化している人が多いことが報告されています。他にも、いくつかの遺伝子のイントロンのSNPと双極性障害の関係が報告されていますが、こうしたイントロンの配列の変化によって、どのような機能的な違いが起きるのかは、ほとんどわかっていません。

 私たちは、このピッコロ遺伝子の個人差を含むイントロンの前後の配列を細胞の中に再現する実験を行うことによって、イントロンのACになると、エクソンの選び方が変化して、翻訳される蛋白の量が異なってくることを見出しました。ピッコロ遺伝子の配列の個人差が双極性障害のかかりやすさと関係しているとすれば、このような機能的な違いによる可能性が考えられます。

 このSNPは人種によっても差があり、日本人ではCの人の割合が高いことが分かっていますが、日本人で特に双極性障害が多いという訳ではありません。このピッコロの個人差だけでなく、さまざまな要因が合わさって、病気へのかかりやすさは変わってくるためであると考えられます。今後、ピッコロの機能をもっと明らかにする研究を続けていきたいと考えているところです。


この研究は、大阪大学、名古屋大学、東京都総合医学研究所との共同研究です。



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管理者のこと
現在、国立大学薬学部で研究室を運営中。精神・神経薬理を専門としています。薬学部が6年制となり、新たなカリキュラムの実施を担当しています。薬学部で、教育と研究の両立は可能と信じて毎日を過ごしています。大学で繰り広げられていることを一般の方にお知らせしたり、神経・精神の研究や薬剤師に興味のある方に情報提供したいです。
私への連絡
プログを読まれて、私にコンタクトしたいと思っていただいた方は、コメント欄にメールアドレスをお書きの上、連絡ください。コメントは私が承認しないと公開されないようにしていますので、メールアドレスや個人的なことが書かれていた場合は公開しませんが、文中にその旨、お書きいただけると助かります。 共同研究、大学院入学(薬学部以外の卒業生、薬学部6年制・4年制卒業生、大歓迎です)のご相談も随時、お受けしています。
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